学力は、テストの点や学校の成績(評定)のことなのか?
「学力」と聞いて、みなさんがイメージするものは何でしょうか。
テストの点数?学校の成績?偏差値?順位?
ちなみに文科省は「確かな学力」という言葉で、次の「3つの要素」で学力を定義しています。
- 何を知っているか、何ができるか(知識・技能)
- 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力)
- 主体的に課題を見付け、自ら学び、判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力(主体的に学習に取り組む態度)
これに照らし合わせ、文科省が実施している「全国学力・学習状況調査」では、「学力」をきちんと測れているのでしょうか。
OECDが実施している「生徒の学習到達度調査(PISA)」は、「学力」をきちんと測れているのでしょうか。
東京大学の入試問題は、「学力」をきちんと測れているのでしょうか。
私は、「学力」は、本来テストだけでは測れないものだと思っています。
学力は「学ぶ力」
テストで学力が測れるかどうかは、一旦脇に置いておいておきます。
みなさんは、今井むつみさんの「学力喪失ー認知科学による回復への道筋」という本をご存じでしょうか。
実は、この本の冒頭に、『「学力」とは、「学ぶ力」だ!』ということが書かれています。
そもそも人間は、生まれたばかりの赤ちゃんの頃から、「学力」を持っている、と。
だからこそ、概念知識をほとんど持たない赤ちゃんの頃から自分で言語を習得していけるんだ、という内容で…。
「学力」って教育を通じて身につけるものだと思い込んでいたけれど、そうではなくて、みんなもともと持っているんだ!!確かにそうだよな~~~と思ったのです。
でも、いつからか、なーんかワクワクと学べなくなる。つまり、学ぶ力を「喪失」してしまう…。
それは、なぜなのだろう?・・・気になる方は一度手に取って読んでみてください。
「学力」の捉えなおし
今井むつみさんの「学力」の解釈に基づくと、教育周りのいろいろな誤解に気づくことができ、たくさんの疑問が生まれます。
テストの結果だけをみて、一喜一憂していないだろうか?
自治体どうしまたは国別の「競争」を煽っていないだろうか?(人間は競争が好きですよね…)
県別、国別でテストの点が上位なら、本当に大丈夫なのだろうか?
暗記(記憶力)を測るようなテストで大丈夫なのだろうか?
私たち大人は、教育の歴史や文化によって、「学力」を間違って解釈してない???
子どもの「学力」(「学ぶ力」)を十分に発揮させるには?
私は、大人が、子どもの「学ぶ力」を奪わないようにすることこそ、大事なことなのではないかと思うようになりました。
では、何が、子どもの「学ぶ力」を奪っているのでしょうか?
それは、「学び」を受け身や強制にする行為なのではないでしょうか。
そうすると、子どもは、いや大人も、とにかく楽しくない。ワクワクしない。
そんな状態で、教育課程に位置付けられている内容を習得しようとしても、「学び」そのものに楽しさも達成感も感じらないのではないでしょうか。
子どもが、心から「学ぶことが楽しい」と思うことができれば、きっとテストで測られる点数も伸びるのではないでしょうか?
ただし、「学び」には、順序があります。
まず、子どもが安心してワクワクを持って、
「知りたい」「わかるようになりたい」「学びたい」
といった、「学ぶ力」を十分に発揮できるような「環境」こそ、今、家庭でも学校でも求められていることではないでしょうか?
「学力」についての、大人の捉えなおし(意識改革)は、なかなか難しいことだとも思っています。
どうすれば、子ども本来の「学ぶ力」を発揮できるか。これを今後も考え続けたいと思います。