【必読】テストの点だけでは測れない!文科省の定義と認知科学が語る「真の学力=学ぶ力」とは?

〜子どもの「学びの意欲」を取り戻すための、大人(保護者・教職員)の意識改革〜

1. 「学力」=テストの点、学校の成績?私たちが抱く一般的なイメージ

「学力」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?期末テストの点数?通知表の評定?高校受験や大学受験のための偏差値や順位?多くの保護者や教職員の方にとって、これらは長らく「学力」の具体的な指標として捉えられてきました。努力の成果が数字として明確に出るテストの点や成績は、わかりやすく、目標を設定しやすいからです。しかし、本当にこれらの数値だけで、子どもたちが未来を生き抜くために必要な「力」の全てを測れているのでしょうか?

2. ファクトチェック!文部科学省が定義する「確かな学力」の3要素

実は、日本の教育を司る文部科学省(文科省)は、「学力」を単なる知識の量とは捉えていません。新しい学習指導要領で重視されている「確かな学力」は、次の3つの要素から構成されています。これは、子どもたちに身につけさせるべき「資質・能力」を明確にしたものです。

【重要】文科省が示す「学力の3要素」

  1. 知識及び技能:何を知っているか、何ができるか。基礎的・基本的な知識の習得と活用。(従来の暗記を超えた「生きた知識」)
  2. 思考力、判断力、表現力等:知っていること・できることをどう使うか。課題解決のために考え、判断し、表現する力。(未知の状況に対応できる応用力)
  3. 学びに向かう力、人間性等:主体的に学習に取り組む態度や、他者と協働する力、自己を調整する力。(自ら課題を見つけ、意欲を持って学び続ける姿勢)
私たちがこれまで「学力」と呼んできたものは、主に1.に偏りがちでした。しかし、文科省は2.と3.、特に「主体的に学習に取り組む態度」こそが、変化の激しい現代社会を生き抜くために不可欠な要素であると強調しています。ここで一つの疑問が生まれます。文科省が実施する「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」や、OECD(経済協力開発機構)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」、さらには東京大学の入試問題などは、これらの3要素全てを本当に測れているのでしょうか?私たちは、テストの成績や偏差値といった一側面だけで、子どもの「学力」を判断してしまってはいないでしょうか。

3. 認知科学者・今井むつみ氏が解き明かす「学力」の真の意味

この問いに、認知科学の視点から光を当てるのが、慶應義塾大学教授(当時)の今井むつみさんの著書『学力喪失—認知科学による回復への道筋』です。今井さんは、この本の冒頭で、非常に重要な提言をされています。

「学力」とは、「学ぶ力」である!

今井むつみ 著『学力喪失—認知科学による回復への道筋』より
今井さんの主張の根底にあるのは、「人間は、生まれたばかりの赤ちゃんの頃から、すでにこの『学ぶ力』を持っている」という事実です。たとえば、乳幼児は、特別な教育を受けずとも、環境の中で自発的に日本語や身の回りの概念を習得していきます。これは、本来、誰もが持っている「学びへの飽くなき好奇心と、それを自力で解き明かす力」の証です。私たちは「学力」を「学校で教育を通じて身につけるもの」と思い込みがちですが、そうではなく、子どもたちは誰もが、生まれながらにして「学ぶ力」を内包しているのです。この捉え直しは、教育に関わる全ての人にとって、大きな気づきを与えてくれます。

4. なぜ、子どもたちは「学ぶ力」を喪失してしまうのか?

本来持っているはずの「学ぶ力」が、いつからか「喪失」してしまうのはなぜでしょうか?それは、子どもたちの自発的な「学び」が、大人や社会の側からの「受け身」や「強制」に変わってしまうからです。

「学ぶ力」を奪う要因

  • 「競争」の偏重:過度な順位や点数の比較が、長期的な「学びの意欲」を奪う。
  • 「暗記」偏重の評価:知識の再生を問うテストばかりで、知的好奇心を刺激しない。
  • 「やらされ感」の蔓延:「やらなければならない」という強制的な学びの状態。
「学び」が楽しくなく、ワクワクしないものになると、子どもたちは本来の「学ぶ力」を十分に発揮できなくなり、結果として、文科省が定義する「思考力、判断力、表現力等」や「学びに向かう力」が育ちにくくなってしまうのです。

5. 大人がすべき「学力」の捉え直しと、子どもの意欲を引き出す環境づくり

私たちが今、家庭や学校で最も力を入れるべきことは、子どもの「学ぶ力」を奪わないこと、そして、その力が自発的に花開くための「環境」を整えることです。それは、大人が「学力=テストの点」という旧来の解釈から脱却し、「学ぶことは楽しい」「知りたいことは自分で見つけられる」という経験を子どもたちに提供することにほかなりません。

子どもが「学ぶ力」を発揮するために大人が整える環境

  1. 「安心」の基盤を築く:失敗を恐れず、安心して「知りたい」「やってみたい」と言える心理的安全性の高い環境を作る。
  2. 「問い」を引き出す:「何を学んだか」ではなく、「何を知りたいと思ったか」「どう活用できるか」という問いを重視する。
  3. 「プロセス」を評価する:結果の点数だけでなく、「自分で課題を見つけた過程」「粘り強く考えたプロセス」を具体的に評価し、内発的な動機付けを促す。
子どもが心から「学ぶことが楽しい」と思えれば、知識は「生きた知識」として定着し、結果としてテストの点数も自然と伸びていくはずです。私たち大人の「学力」に対する意識改革こそが、すべての子どもが本来持っている「学ぶ力」を最大限に引き出し、未来を切り拓く力を育むための第一歩となります。この視点を持って、今後も教育について深く考え続けていきましょう。

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